COLUMN

Women in Paris Vol.11
Mikako Ishii(2/3)

パーソンズ美術大学といえば、マーク・ジェイコブスやトム・フォードなど、きらぼしのごとく才能が輩出した有名校。世界中から生徒が集まる人種と個性のるつぼだ。「アジアやヨーロッパからはもちろん、アメリカ自体が大きな国なので、ニューヨーク以外の州からも入学してきた生徒がたくさんいて、そのミックス感が面白かったですね。いろんな国の友達ができて、大学生活はとてもアクティブでした。パーティやイベントに行ったらファッション関係者がたくさんいて刺激的でしたし、一方で学校の課題はものすごく多くて、それをこなせたことは自信につながったし、これまでブランドを続けられたことの礎になっている気がします」。アメリカでの充実した生活を楽しみながら、一方でヨーロッパへ憧れる気持ちも。その当時住んでいたローワーイーストはどこかヨーロッパの面影のあるエリアで、ふとした時に「これ、好きだな」と思うのはヨーロッパ由来のものが多いと気づいた。「本格的に働き出す前に一度、やっぱりヨーロッパを見てみたいなと思って、パーソンズを卒業した後、パリのステュディオ・ベルソーで学ぶことにしました」

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ベネチア時代のスナップ。ブランドを共に始めた友人と?

パーソンズは大学ということもあって課題も多く、かなりハードで多忙な学生生活だったが、ステュディオ・ベルソーは日本でいうところの専門学校で、拍子抜けするほどゆっくり、淡々としていたという。「アメリカではなぜこれを作るのか、そこにはどんなストーリーがあるのか、というような、コンセプトが大事で、それ自体を学ぶクラスもありました。だけどフランスに来てみたら、極端に言えば、出来上がったものがきれいならいい、というような雰囲気があって。どちらがいいとか悪い、という話ではなく、私にはフランス式といいますか、感性を大切にするその感じが合うな、と思ったんです」。ステュディオ・ベルソーで2年間学んだ後は、パーソンズ時代の友人に誘われてニューヨークへ戻り、フリーランスとしてニットブランドで働くことになる。「ニューヨークはやはり売ること、そしてスピード感が大事。もうちょっと時間をかけて物作りをしたいな、と思いながら働いていました」

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こちらもベネチアでブランドを営んでいた頃、アトリエにて?

ニューヨークで働き始めて1年半ほどが経った頃、ステュディオ・ベルソーで知り合ったイタリア人の友人から、祖母が大きな敷地を持っているヴェニスを拠点にして一緒にブランドをやらないか、と誘いの連絡がくる。「タイミング的にも、きちんと物作りに向き合いたいなと思っているところだったし、いい話だと思って飛びつきました。イタリアへ渡って生地やレースを探して、コレクションを作って展示会に出展したら、日本のセレクトショップからも注文をもらえるようになって。ただ、友達と二人だけでこの規模感を維持しながらやっていくのが大変で」 パリに拠点を移した方がいいのではないかと考え、リスタートすることになる。