COLUMN

Women in Paris Vol.7
Momoko Honda(4/4)

現在、本田さんはパートナーのダミアンさんと共に「semoda knitwear」を運営。ダミアンさんはニットプログラマーであり、オランダのテキスタイルミュージアムにも勤務。本田さんはニットに関する技術や知識をさまざまな場所で伝える活動と併せて、ニットのリペアも行っている。「ニット限定でのリペアなのですが、ファストファッションからハイブランド、ぬいぐるみ、手袋、いろんなものが持ち込まれます。フランス人は穴が開いたTシャツをそのままずっと着てたりするんですが、とにかく値段が高いとか安いとかじゃなくて、気に入ったものを大事に着るんですよね。パッと見ただけでは分からないくらいの穴を気にして持ってくる人もいれば、新しいのを買った方が早いんじゃないかと思うくらい(笑)ボロボロのものや、つぎはぎだらけのものを持ってくる人もいます」。穴を塞ぐための糸は、襟の中などにパイピングされている糸を引き抜いて使ったり、自身のストックから似た色や素材のものをピックアップ。物によって縫製の仕方が違うので、どういうやり方が一番適切かを見極めて対応するという。

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ニットデザイナーの友人からもらう糸見本もリペアで再利用。
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リペア依頼主からのメッセージ。

夫婦共に、オタクと言っていいレベルのニットマニアで、時間があるとブティックへ出かけてニットをじっくり検分し、どれだけ時間をかけて編まれたものか、糸の重量はどのくらいか、どのくらいのクオリティの糸を使っているのか、価格は適正かといったことを二人で話すのが楽しいという。「一言にカシミアといってもいろいろあって、触った瞬間に違うものが混じっていると分かってしまったりします。私の大好きなバリーという、スコットランドのカシミアブランドがあるのですが、リペアのお客さんが持ってきた古いバリーのカシミアは質がすごくよくて、そんな風に勝手に査定したりすることもあります(笑)。あと、アライアも大好きで、お店に行くとついじっくり見てしまうブランドの一つです」

夫と娘
ダミアンさんと抱っこされる娘。
ウルトラモッドにて。興味深そうに商品を手に取るところ、血は争えない?

休日は、今年の9月に小学校へ上がる娘と家族3人で出かけることもあるというが、趣味と仕事が一緒になってしまっているので、ウィンドーを眺めながらついダミアンさんと「査定」してしまうという本田さん。デザイナーやパタンナーなどを職業とする友人と夫を交えて、情報交換するために定期的に会っては、ニットやモードの話で盛り上がるのだとか。「人を見るのも好きですね。特にファッションウィークの時期は楽しいです。リペア品の受け渡し場所としてウルトラモッドを借りているのですが、そこにもエキセントリックな格好をしたお客さんが買い物しにくるので、面白いんですよね。パリって国際フェアがすごく多いので、そういうユニークな人に出会える確率が高い場所なのかなと思います」。人とは違う生き方をしたい、と早くに海外への移住を目標に定め、そのビジョンを叶えるために自らが設定したたくさんの課題をクリアして、肩書きをつけるのが難しいほどの、誰もやっていない仕事を手にした本田さん。あくなき探究心と学びをやめない姿勢で、これからもニットの道を突き詰めてゆくことだろう。