COLUMN

Women in Paris Vol.10
Kaori Ai(1/4)

現在、パリの2区でヘアサロン「Salon aiguén」(6 rue D’Amboise 75002 Paris @salon_aiguen)を経営する、ヘアスタイリストの藍かおりさん。異国にて、幼い頃の夢が叶うまでの道のりや、これからの夢についてもお聞きしました。

千葉県いすみ市、2020年東京オリンピックのサーフィン会場にもなった、海の近くの町で生まれた藍かおりさん。美容院を営む母親の親友のところへ物心ついた頃から出入りしていて、現在の仕事につながる原体験はそこにあるという。「自宅から車で15分くらいのところにその美容院はあって、母と一緒によく遊びに行っていました。片付けを手伝ったりしたことを覚えていますね。母親は専業主婦だったのですが、それが嫌だったからか、小さい頃から“手に職を持ちなさい”と言われ続けていて。誰でも、魔法をかけられるかのように、親からの言葉に知らず知らず影響されることってあるんじゃないかと思うのですが、気づいたら美容師になっていました(笑)」。まだインターネットもなく、ましてや地方都市では手に入る情報も少なかったこの時代「私、なぜか分からないけれど、小学生の時に『cancam』を読んでいたんです。5年生か6年生の時だと思うのですが、クラス委員の選挙のためにビデオ撮影をしたことがあって、その当時『cancam』によく出ていた今井美樹さんのような、大きめのシャツに洗いざらしのジーパン、ロングヘアの三つ編みというスタイルで撮ってもらいました。自分が着るものや、髪型をどうするか、毎朝時間をかけて考えていましたし、自分の髪を触るのも好きな子供でしたね」

セーヌ川が見える自宅の窓からの風景。遠くにはエッフェル塔が。

小学校高学年の頃には美容師になりたいと思い、高校を卒業したあとまずは美容の専門学校へ行く、と決めていた。当時高田馬場にあった学校へ入学するため、高校卒業と同時に上京することになる。「どの学校に行くか、に関しては、あまりこだわりはなくて。ただ、田舎の実家を出て東京に行きたいという気持ちは強くありました」。念願の一人暮らし、それはそれは楽しい毎日だった。好きなこと、興味のあるカルチャーを共有できる友人もたくさんできて、クラブに足繁く通い、単館系の映画館に出入りするなど、刺激に満ちた都会生活を満喫したという。「実家の方では、田舎ルール、っていうんでしょうか、暗黙の、やってはいけないことがあるように感じていたので、東京へ出てきたらやっとのびのびできました。そこでできた友達とは、田舎で通じなかった話が通じるというか、自分よりも知識がある人がたくさんいて、すごく影響を受けました」。学校の授業では語学もあり、いくつかあった選択肢の中からフランス語を専攻。その時初めて、フランスという国を意識することになった。

子どもの頃のスナップ。外でよく遊び、夏には近くの海で毎日泳いでいた。