そんな中、高中さんのストーカー魂(!)に再び火を付ける存在が現れた。ヴァレンタイン・シュレーゲルという、2021年に亡くなった陶芸家である。高中さんがその存在を知ったときは存命で、ありとあらゆる手段を使って彼女のことを調べたが、女性陶芸家ということもあって情報が少ない。どうにか取材ができないかと、本人ではない誰かが管理しているSNSにメッセージを送ってみたところ、残念ながら数日前に入院してしまったという。その2週間後には亡くなったことを知り、きっと関係者がたくさん来ているだろうと葬儀会場へ足を運んだが、集まっているのはほんの20~30人ほど。「知り合いもいない上、アジア人一人でいるから目立つんですよね、アメリカ人の老婦人に声をかけられたんです。“あなたの履いているパンツ、素敵ね。モード業界の人?ヴァレンティンを知っているの?”って。ただのファンだけど、見送りたくて来たって言ったら“come on, come on!”って家族や関係者が集まっているところへ連れて行かれて、私、そこで号泣しました(笑)」。2017年に開催された展覧会に携わり、カタログへ文章を寄せたアーティストのエレーヌ・ベルタンを、この場でどうにか捕まえたいと思っていた高中さん。「スピーチをした人が同じ名前だったから、彼女だ!と追いかけて、日本の雑誌でヴァレンタインのことを紹介したいとお願いをして、連絡先を交換しました。実は最近、陶芸を習っているのですが、ヴァレンタインが降臨してくれないかなと思いながら、彼女風の作品ばかり作って先生に呆れられています(笑)」。