COLUMN

Women in Paris Vol.14
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「フェンディとのプロジェクト以降、彼がものすごく忙しくなって、徐々に“私の仕事”が“彼との仕事”に変わっていきました。企画書やコンセプトを作ったり、海外との案件だと言葉のこともありますし。と同時に、日本ではなく海外を拠点にしたいという思いが強くなっていきました」。もともと、ロンドンかベルリンに住もうと思っていた彼も、個展を行ったパリの印象がよかったようで、その後、移住先をパリにしようと、準備を進めた。

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2018年デザインマイアミにて発表された世界にたった一つのFENDI 「PEEKABOO」

2019年にビザを申請し、その手続きに必要だったこともあって入籍。申請して2ヶ月ほどでビザがおりた。2020年5月に移住することが決まったが、本来はビザがおりてから3ヶ月以内にフランスに入国しなくてはならないという規定があるにも関わらず、コロナ禍に見舞われて渡航することができなくなってしまう。「結局、ビザの期限が6ヶ月延長されたため、その期間に3つの個展を開催しました。私はカタログやプライスリストを作ったり、私の仕事はコロナで激減してしまったんですけど、彼と出会ってからめちゃくちゃ忙しかったです」。そして11月、ついにパリへの移住を果たす。

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パリのアトリエでの春のおもてなしテーブル

パンデミック下の静かなパリ、13区の南側にアトリエを構えてパリでの暮らしがスタート。昨年の12月には隣にあったフォトスタジオが空いて、そこも借りた。生活の基盤を築くためのさまざまな手続きは日本と勝手が違い、一つ一つクリアするごとに達成感を抱きながら、3年が過ぎた今、ようやく自分たちの暮らしが整いつつある。「最終目標は彼の絵が売れることなのですが、まずは家にお招きして、私たちの暮らしや生きる姿勢のようなものを感じ取ってもらって、彼という人間に興味を持ってもらう。フランスでの人間関係を構築するのには時間が必要だということを実感していて、焦らずじっくりとコミュニケーションを取り続けようと思っています」。そのため、家には来客が絶えず、ディナーのための準備が入ると他のことは何もできなくなるが、まずはヨーロッパでの活動を広げることが第一と考えてそこに労力を割いている。「最近は、あなたは何をしているの? と聞かれることも多く、これまでやっていた仕事を再開しようかなとも思ったのですが、今はどちらかというと外向きのエネルギーよりも、内向きのエネルギーを使いたい気持ちが強くて。彼のパリでの仕事も軌道に乗ってきたので、こちらに来てから陶芸を始めたのですが、アトリエが広くなったこともあって、今は陶芸に時間を注いでいます。作ることが好きだし、クリエイティブなことに没頭する時間もできて、いい感じです」

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パリのアトリエでゲストを迎える新年のテーブル
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窯入れする前の壺

食空間のプロフェッショナルであり、当然、食器の目利きでもある。フランスの伝統的な洋食器もいいけれど、素敵な和食器はフランスではなかなかいいものが見つからない。フランスは今、空前の日本ブームで和風の焼き物もあるが、作家ものだと何百ユーロもするし、そうでなければ「フェイクジャパン」な感じなのだとか。「兵庫県の出身なので、丹波の立杭焼が好きで、作家ものの器をたくさんこちらに持ってきたんですが、それでお料理を出したら、わー、っと盛り上がるんです。いずれは自分の陶芸作品も含めた空間をプレゼンテーションしていきたいし、そういったことを長く続けていきたい。私は飽き性なので、“長い旅”が始まることにちょっとドキドキしていますが、せっかくヨーロッパにいるのだから長い時間をかけて、新しい自分の形を見つけていけたらいいなと思っています」

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アトリエ近くの公園にはいつも花が溢れ癒される
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時々散歩に行くヴァンセンヌの森